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どんな世界を奏でようか。わたしの目に耳に心に映る事々。

自分を信じること

耳慣れた言葉。

「自分を信じる」だなんて。

そんなの、とっくに知ってる。

信じれてるさ。と思う自分。

信じれてるのかな。と疑う自分。

 

この両者の狭間で忙しい。

そんな思いの闘いは常に繰り広げられているものだ。きっと誰の頭の中でも。

 

今じゃどの本を開いても書いてありそうな

「自分を信じる」言葉が、今日の私には

ひと味もふた味も違ったものになった。

 

とある人のとある言葉が異様に突き刺さり、そのトゲは一見すると細く、刺さった事さえ忘れてしまうほど大したトゲではないと思っていたのに。

 

意に反してずぶずぶと。

深く、深く、入っていった。

想像以上に深い傷を負っていた。

それでも私はその傷に絆創膏をはる。

傷口はヒリヒリして痛むのに、何食わぬ顔で日常をやり過ごした。

 

その傷口から血が溢れ、絆創膏じゃ足りないと気付いた上司が見兼ねて食事に誘ってくれた。

 

薄いヴェールのような衣をそっと傷口に押し当てた上司は優しく尋ねる。

私は声にならない声でポツリ、ポツリ、とこぼし始めた。

 

 

溢し始めた途端、傷口から何かが噴出した。

もう限界だったのだろう。

抑えることなど出来ずに、中から中から、溢れだして、制御不能なほど。

 

過去の涙が。

負った傷の痛みが。

痛みを誤魔化そうと、自分さえも誤魔化してきたこと。

 

上司はすべて知っていた。

 

きっと、私以上に、哀しんでいた。

 

彼女の目から、悲しみや憤りを微かに、でも確かに感じ取った。

 

愛からの悲しみや怒り。

私がわたしを愛おしんであげられない代わりに彼女が哀しんでくれたのだ。

 

私の感情を受け止めてくれてありがとう。

私以上に私を大切に想ってくれてありがとう。

という温かい気持ちと、彼女を悲しませてしまった自分を少し不甲斐なく思った。

 

そんな彼女をもう悲しませたくなかった。

出来るなら彼女を喜ばせたい。

彼女が1番に喜ぶ方法で。

 

信じれない自分を信じてみようと思った。

 

彼女は私の知っている全てのことを教えてくれた。

 

やさしい強さがあるということ。

その強さは誰かの希望になること。

あるがままでいいこと。

そのままの私で居ていいこと。

強さも弱さもあっての今のわたしがあること。

全ての感情や感覚は無駄ではないこと。

それは宝物であること。

 

私の感情までひっくるめて、愛す、とそう言ったのだ。

 

なんて人だ。

なんてチャレンジャー。

不信、などという言葉は微塵もない。

一点の曇もないほどに凛とした姿。

確信に満ちた彼女の言葉に、私はわたしを少しずつ信じ始めた。

 

過去に負った傷も彼女になら見せられると、さらに口を開いた。

 

受け止めてくれる人を長いこと待っていたのか、もう私を止めることなど出来ず、涙が溢れんばかりに頬を伝う。

冷たいラーメンと熱い涙でぐちゃぐちゃだったけど、不思議なことに飲み込むたびに肩の荷は少しずつ解れていった。

 

過去の傷をふさごうと、絆創膏の数だけが増えた私の痛々しい体が横たわり、 

傷を隠そうと悲しみの数だけ増えた衣服の数々。

服を1枚ずつ脱ぎ捨てる度に、

 

あぁ、こんな衣服を装っていたな。

あぁ、こんな時もあったな。

 

過去に置き去りにしてきた体験や感情があったことに気づいた。

ずっと無いものにしてきたんだ。

 

ほんとは、知ってたよね。

ほんとは、きづいてたよね。

 

どこかで私がささやいた。

 

知ってるのに知らないふりをして、綺麗な顔を装うのはもうよそう。

 

きっと過去の体験が私のこれからの道しるべになることは間違いないだろうし、誰かの力になるかもしれない。

 

過去に置いてきた荷物は荷物じゃないかもしれない。

 

その中から光を見つけよう。

そう確信した。

 

だから私は喜んで道を戻ろう。

忘れ物を取りに。

過去へ戻ろう。

過去の私よ、ごめんね。

過去にがんばってきた私よ、それすらも忘れてしまってごめんね。

 

もう無かったことにはしないよ。

 

さぁ、道はまっさらになった。

 

これから私の旅は始まる。

大切な物を拾い集めてから、次なる道へ進もう。

 

私にしか知り得ない道へ。

いざ、参らん。